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冷凍粉砕

冷凍粉砕

欧米では液化炭酸ガスを使う方法も一部採用されていますが、液化炭酸ガスの沸点[昇華点]は大気圧下で-78.5度と、液化窒素に比べると100度以上も高温(!)であること、および大気圧下で保管容器から取り出すと液体窒素は液体のままゆっくり蒸発していくだけであるのに対し、液化炭酸ガスは蒸発熱により温度が下がって固化、すなわちドライアイスができるため材料を冷やしにくくなり(液体でなくなるため、原料との接触面積が減少する)使いにくい、ということから、主に液体窒素が用いられます。

さて、このような前処理を使うと投入前に砕料を冷やしておけば普通の粉砕機に入れることができるので問題解決、となりそうですが、そう簡単にはいきません。
その大きな理由は、粉砕という操作が非常に多くの熱を発生してしまうためです。
粉砕機が使用するエネルギー(電力)はそのほとんどが原子間の振動などに変化し、熱になります。実際に砕料を砕くことに使われるのは最大でも数%といわれています。

したがって予め原料を低温に保持するだけでは、粉砕中にすぐに砕料の温度が急上昇し、冷却した意味がなくなってしまいます。
そこで原料を低温に保持する段階から、粉砕に至るシステム全体を液体窒素で冷却する装置、冷凍粉砕システムを開発しました。この装置は液体窒素を有効利用するために、液体窒素と、気化した窒素を循環させるように運転しますが、このため系内の酸素濃度が低くなります。これは食品などの酸化を抑制し、香りや油分、色素が保たれた粉体が得られるという利点も、もたらします。

ちなみに最終製品の保管場所までがこのような低温環境であれば問題はありませんが、普通は常温で回収、充填、あるいは他の工程への輸送が行われます。つまり凍った原料に含まれる水分や油分が溶けだすことになります。また結露も発生します。場合によってはペースト状になることもあります。そのため、製品を品温へゆっくり戻しながら乾かしたり、あるいはペースト状になる前提で、輸送等を考える必要があります。

なお冷凍粉砕には経済的な注意点があります。液体窒素は使うほど温度は冷えて通常、粉砕性が上がり、細かい粒子を得ることができるようになります。問題は、少しでも小さい粒子が欲しいとなると、途端に液化窒素の使用量が非常に多くなり、処理能力も激減してしまうということです。処理能力の低下とともに、液体窒素の使用量が2~10倍に増えてしまいます。液体窒素はおおよそ1,000円/Lくらいと、比較的高価です。例えばプラスチックの一種であるポリプロピレンですと、原料1kgを粉砕するための液体窒素の金額は約37円、さらに細かいものがほしい場合は約148円になります。そのため、商業的には適切な粒子径を選定し、できる限り液体窒素の使用量を減らすための工夫などが必要になります。