「粉体」という言葉そのものが耳慣れないと思いますが、石臼やふるいは粉体技術を応用した最も古典的な道具であり、「粉を石臼でひいて細かくする」、「粉をふるい分ける」、「唐箕(風篩)で玄米とモミ殻を分ける」 などの“粉を扱う技術”が「粉体技術」です。また、粉体技術を用いて作られた商品は、身近な日常生活の中に溢れています。例えば、小麦粉、薬、化 粧品、洗剤、トナーのような粉状の製品からリチウムイオン電池、液晶、コンデンサ、紙おむつ、タイヤ、ペットボトルなどの一見粉とは無関係に思える製品に至るまで、最終製品あるいは原料、製造工程のどこかの 段階で粉の状態で存在するものは非常に多く、それらをあつかう際に粉体技術が用いられます。ハイブリッド車、スマートフォンなどは、“粉体技術の塊”といっても過言ではなく、原始から現在そして未来へと人類の 歴史と共に存在する技術なのです。
医薬、食品、化学、自動車、IT、エネルギー、樹脂、鉱物など幅広い業種にわたって顧客が存在します。粉体技術は業種横断的な技術であり、特定業種に依存しない業態であることが当社事業の特徴といえます。また、これは当社事業が景気の波に左右されにくい要因ともなっています。
1916年の創業以来、約100年におよぶ粉体技術一筋の経験やノウハウに裏付けられた製品やシステム、エンジニアリングが何よりの強みです。そして、年間3,500件にもおよぶテストが持ち込まれ、市場の最新情報ともいえる客先からの最先端ニーズの集約拠点となるテストセンターでの知見が優位性を生む源となっています。また、研究開発型企業として、延べ取得特許:国内339件、海外117件の実績を持ち、産学連携、シンポジウムや講演討論会の主催、粉体技術専門誌(「粉砕」誌:1957年~、「KONA」誌:1983年~)の発刊などにも積極的に取り組み、研究者との強固で密接な関係を構築・維持していることも優位性につながっています。また、粉砕機や混合機、乾燥機など装置別に特化した専門企業があるのみで、世界的に見ても当社のような業態を持つ粉体装置の総合企業は存在しません。
当社の事業領域は、特定の市場に依存するのではなく、広い産業分野で日本等が先導してきた最先端材料の開発や加工にかかわる部分です。近年、市場拡大が進む二次電池材料なども注力市場のひとつではありますが、当社にとってはトナー、磁性材料、樹脂、食品、医薬などの粉体市場の一分野に過ぎません。注力市場は特定業種で区切るのではなく、粉体市場の中でも高度な技術が求められるハイエンドな部分や既存の市場範疇を超えた新たな技術需要の分野だと認識しています。このように注力分野は産業分野で特定しているわけではありませんが、地域的に新興国に注力する方針を持っています。
当社製品は、リチウムイオン電池の正極材、負極材の原料を加工する工程の一部に用いられる機器のため、リチウムイオン電池市場の伸びに比例して増加する訳ではありませんが、ビジネスチャンスとして膨らむ可能性はあります。
販売子会社や駐在員事務所の設立・人員増で、物理的な対応力の強化を図っていく方針です。2012年春、ロシアに販売子会社を開設し、マレーシア子会社と上海子会社には人員補強を行いました。さらに、ブラジルの代理店とグループ会社を通じて設立した受託加工会社が2019年7月から稼働しました。その他にも、有力代理店を招いての技術研修や新興国の現地企業を集めた技術セミナーの開催など、新興国内で直接営業活動を行う部隊の強化・支援を進めたり、直接現地企業の動向や需要をくみ上げる取り組みを続けています。さらに、世界の工場へと進化を続けるアジア地域については、アフターセールス活動の強化地域とも考えて取り組んでいます。欧米、日本で生まれた技術が新興国で利用されるようになってきたことに敏感・迅速に対応していくことで、新興国での地盤強化を図っていく方針です。